日雀レオの創作
日雀レオの創作まとめ
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日雀レオの創作 ©LeoHigara 一次創作 original stories ザイカ 終わる世界で選ぶ道 ガラクタの街のヒトカタリ 殺戮サーカス団 また一つ命が散る(仮) 箱庭の解 フォロワーキャラ化 その他の一次創作(単発作品) original illusts 二次創作 TRPGシナリオ ファンアート
- ザイカ | 日雀レオの創作
ザイカ ある日、彼女が消えた。 彼女を探す彼は、不思議な世界に迷い込む。 そこにいる人たちは一様に「罪」を口にする。 この世界は何なのか、そして彼女はどこに。 この作品には「自殺」をはじめとするグロテスク・不適切な表現が含まれます。閲覧の際はご注意ください。 18歳未満の閲覧はご遠慮ください。 ある日、黄昏が空を覆う頃。「彼」 の地はまた開かれた。呑まれた「花」 は始まりを告ぐ。「果」 実は赤く、記憶は黒く、聞こえてきたのは今は亡き「歌」 。 微かに見えた「火」 の中に、「ザイカ」 はそっと微笑んだ。 「過」 ぎた後にしか分からない。■■に残るは「罪」 なりや? ザイカ本編小説ver. ザイカの小説ver.です。最終的にはノベルゲームにすることを目指しています。 法則: 選択肢で分岐する場面では、星で対応をつけています。☆が選択肢、★が結果です。 ☆選択肢 →A →B ゲーム内使用イラスト集 ゲーム内で使用するイラスト集です。がっつりネタバレあり。 キャラクター一覧 登場キャラクターの一覧です。モブの裏ストーリーもあります。 落書き
- また一つ命が散る | 日雀レオの創作
また一つ命が散る(仮) 工事中 工事中 。 工事中 。 工事中 。 落書き
- オワセカキャラクター紹介 | 日雀レオの創作
キャラクター紹介 イリア(Ilya) 主人公の少女。 化物化が進行している。 彼女の化物化は鬼のような外見。とても人間とは思えないだろう。 ビーツ 災害によって生まれた化け物。イリアと共に旅をしている。 エス=ギフト 化物化が進んでいる男性。 蛇と融合している。 イリア(Ilya) 主人公の少女。 化物化が進行している。 彼女の化物化は鬼のような外見。とても人間とは思えないだろう。 1/3
- ザイカ本文 | 日雀レオの創作
プロローグ ある日、黄昏が空を覆う頃。 「彼」の地はまた開かれた。 呑まれた「花」は始まりを告ぐ。 「果」実は赤く、記憶は黒く、(変更あり) 聞こえてきたのは今は亡き「歌」。 微かに見えた「火」の中に、 「ザイカ」はそっと微笑んだ。 「過」ぎた後にしか分からない。 ■■に残るは「罪」なりや? cp1. 彼の地 夕方の高校。部活の声でにぎわう時間。 校門の付近で、少年が立っていた。 キト(深山祈人)「…」 キト「ヒノ遅いな、今日は部活ないって言ってたのに」 スマホの着信音が鳴る。 キト「!」 キト「ヒノだ」 キト「ヒノ?どうしたの?」 ヒノ(春日井灯乃)「…て」 様子がおかしい。ノイズがひどい。何も聞こえない。 キト「もしもし?ヒノ?聞こえない」 ヒノ「…て、た…て、キト」 キト「ヒノ?ごめん、なんて言」 唐突に電話が切れた。 キト「…切れた」 キト「ヒノ、何かあったのか?」 怪訝に思いながらも、少年はスマホをポケットにしまう。 キト「迎えにいこう」 玄関についた。 人の気配がしない。 キト「おかしいな、さっきまで部活をやってる人がいたはず」 異様な雰囲気に気圧されながらも、少年は向かう場所を決める。 ☆選択肢 →教室へ行く →美術室へ行く →屋上へ行く ★選択肢:教室 キト「教室にいるかな。もしいなくても他の人がいれば聞けるかもしれない」 ヒノが在席する2-Aについた。 扉を開ける。 キト「誰もいない…まぁ、こんな時間だからかな。 でもこの人のなさは異様だな」 キト「うーん、どうしようかな」 キト「他にいそうな所は…」 少年は次の場所へ向かう。 ☆選択肢 →美術室へ行く →屋上へ行く ★選択肢:美術室 ヒノの所属する美術部にやってきた。 キト「失礼します」 扉を開ける。 誰もいない。道具も綺麗に片付けられている。 キト「…誰もいないな。今日は部活がないってヒノも言ってたし」 キト「ん?これ…」 机の上に筆箱と紙が置いてある。 キト「ヒノの筆箱だ、忘れていったのかな?」 紙をめくる。 キト「うわ、これなんだろう。真っ黒で何が書いてあるかわからないな」[p] キト「これが芸術なのかな…?ヒノはこんな絵を描かなかったと思うけど」 キト「もっと繊細な…優しい絵を描くはず。うーん、何だろうなこれは」 謎の絵をそっと戻し、ヒノの筆箱を鞄にしまう。 キト「届けないと。この絵は…ヒノのものかわからないしな」 キト「他にいそうな所は…」 少年は次の場所へ向かう。 ☆選択肢 →教室へ行く →屋上へ行く ★選択肢:屋上 屋上はヒノが好きな場所だ。 よくそこで美術部の仲間と一緒に絵を描いていた。 キト「もしかしたら、屋上かな」 普段はあまり使わない屋上への階段へ、少年は足をかける。 他の階の階段と段数は違わないはずなのに、やけに長く感じる。 キト「やっとついた」 屋上に繋がる扉に手をかけ、開いた瞬間。 キト「うっ…!?」 彼の意識は暗転した。 →cp.2へ cp.2 舞花 黒で塗り潰されたような空間。雨が降っていることだけが、かろうじてわかる。 キト「…ここは?」 キト「真っ暗…というよりは真っ黒だ」 足元に目をやる。雨は自分の立っているであろう地面を通過していく。 キト「えっ?地面が…ない?」 浮いているような非現実感。慎重に身を起こす。 影も写さないこの場所では、地面があるかどうかすら確信が持てなかった。 キト「重力はある…でも浮いている…?というよりは、足元になにかまとわりつくような。 まとわりつく泥を踏みしめているような…」 あまりにも現実離れした状況に脳が混乱する。 不安と恐怖が足音を立てる。 キト「なんなんだここは」 冷や汗が伝う。ふと、雨が自分の体を濡らしていないことに気づいた。 自然の法則が通用していない。まるで幽霊のように。 気味の悪さに恐怖を感じ、現実感を求める。 キト「そうだ、スマホ…ない。鞄もない」 焦りが増す。 キト「僕はどうしてここに…?確か学校の…。 そうだ、屋上に向かったはず」 キト「それで、ええと…ダメだ、思い出せない」 キト「ここはどこなんだ?」 ???「忘れてしまったの?」 キト「!?」 気づくと、中学生ぐらいの少女が後ろにいた。 目には金属のような目隠しをつけている。まるで枷のようだ。 首には赤い筋のようなものが入っている。 少女「忘れてしまったの?なぜ、あなたがここにいるか」 キト「き、君は…?」 少女「ここはザイカ。罪なるザイカ」 キト「ザイカ?」 聞いたことのない単語に首をひねる。 少女は気に留めることなく口を開く。 少女「あなたの罪は何?」 キト「罪?どういうこと?」 初対面の会話とは思えない単語に眉をひそめる。 少女「ザイカは、罪の意識を持つ者が集う場所。あなたの罪は何?」 キト「何を言って…ここは学校じゃないんですか?」 少女「違う。ここはザイカ。罪なるザイカ」 キト「学校じゃない?ザイカって」 少女「あなたの罪は何?」 またしても奇妙な問いを投げかけられる。 キト「罪なんて急に言われても一体どういう」 少女「…」 少女「忘れてしまったのね」 少女は興味が失せたように顔をそむける。 少女「私は覚えてる。私の罪を」 少女「私はお母さんとお父さんを裏切った」 少女「自分が楽になるために。ただ逃げたいという衝動に任せて」 少女「恵まれていたはずなのに。何も問題はなかったはずなのに」 少女「私は間違った。私が苦しいなんて思っていいはずないのに」 少女「お母さん、お父さん」 少女「ごめんなさい」 少女「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」 キト「ちょっと、落ち着いて…」 少女「主が、呼んでる」 キト「ちょっ、待っ…!消えた!?」 少女は闇に溶けるように消えてしまった。 キト「どうなってるんだ…」 キト「ここはザイカってところ…?で、学校じゃなくて」 キト「夢なのかな」 キト「それにしては意識がはっきりしすぎている気がするけど」 キト「罪、ってどういうことだろう」 キト「あの子は何かを悔やんでいたみたいだけど」 キト「消えちゃったし…どうしよう」 ☆選択肢 →歩く →助けを求める →待つ ★選択肢:歩く 前だと思わしき方向へ進んでいく。 何もないせいで方向感覚が麻痺してくる。 キト「何も…ない。 誰もいない、何なんだここは」 すると、かすかに人の声が聞こえた。 キト「ん?この声は」 キト「ヒノ?ヒノの声? 泣いてる…?」 声を頼りに進む。 しばらくすると、大きな木が見えてきた。 キト「これは…桜。なんでこんなところに?」 キト「うっ」 突然視界が白くなる。 脳裏に浮かんだのは桜。桜の咲いた庭。ヒノの家だ。天気は雨。桜が雨に打たれて散っている。 ヒノが座り込んでいる。こんな土砂降りの中、何故? …泣いている? 何かを 叫んでいる? キト「今のは、ヒノ」 キト「泣いてた…何があったんだ?今のは一体?」 キト「桜…雨…なんだろう、何か引っかかる」 →cp.3へ ★選択肢:助けを求める キト「誰か、いますかー?」 返事はない。 キト「誰かー!!さっきの人いませんか!」 声は虚空に響いていった。 ☆選択肢 →歩く →助けを求める →待つ ★選択肢:待つ …。 ……。 何も起きない…。 ☆選択肢 →歩く →助けを求める →待つ cp.3 赤い果実 視界が元に戻る。すると、周囲の景色が変わっている。 キト「な、なんだここは」 壁と床が肉傀のような通路に彼はいた。脈動する壁と床。内臓のようなシミ。血のような物が滴っている。 先ほどとは打って変わり、あまりにもグロテスクな空間だった。 キト「場所が変わった…!?」 キト「人の体の中にいるみたいだ、気持ち悪い」 キト「さっきから何が起こってるんだ…夢なら覚めてくれ」 ???「そうだな、夢だったらどれほどよかったか」 後ろから、フードをかぶった青年に声をかけられた。 青年「お前は誰だ、何故ここにいる」 彼もまた、金属製の目隠しのようなものをつけている。 キト「うわっ!びっくりした」 青年「誰だって聞いてんだ」 キト「み、深山って言います。えっと、何故ここにいるかは…わからないです。僕は学校にいたはずなんですが」 青年が怪訝な顔をする。 青年「ふうん?しらばっくれようってわけか。『ここ』にくる奴だ、隠す必要もない。 …お前には、どんな罪があるんだ。見たところまだ高校生じゃねえか」 キト「また罪って…僕は、何もしてません。 さっきの中学生ぐらいの子にも同じことを聞かれたけど…」 青年「中学生?ここにはそんな奴はいないはずだが」 キト「え?」 キト「さっきまで、真っ暗で雨の降っている空間にいたんです。そこで女の子に出会って、桜があって…」 青年「何を言ってるんだ?訳が分からないな。ここにガキはいねえよ。桜なんてそんな綺麗なものもない」 キト「どういうこと…ここは一体何なんですか」 青年「ここはザイカ。罪の意識を持って死んだ奴が集まる場所だ」 キト「死っ!?い、今死んだ人が集まるって」 青年「そうだ。…死んだこともわからなかったのか」 キト「そんな、嘘だ、そんなこと」 死んだ?そんな記憶はない。 キトは頭をかかえる。 青年「哀れだな。死んだことも忘れて、自分が何をやったかも自覚がないのか。『ここ』にいる意味自体忘れてそうだな」 青年「こんなところに来るくらいだから生前大層やってる(ルビ)もんだと思うんだがなあ」 青年の言い方に嫌な想像をする。 キト「やってるって…何を。僕は何もしてませんよ」 青年「…はあ」 青年「何でお前みたいな奴がここにくるんだ?ここは、お前みたいな奴がくるところじゃないだろうに」 青年「まぁ俺の知ったことじゃねえな」 キト「待ってください、僕はどうすれば」 青年「お前のやったことを正しく思い出せ。そして、罪に向き合え。俺から言えるのはそれだけだ。 …じゃあな」 青年は去っていった。 先ほどの青年は瞬く間に消えてしまった。 キト「また消えた…」 歩きながら考えを整理する。 足元はぬかるんでいてとても歩きづらい。 キト「罪…死…」 キト「そんなことありえない…。 だって僕は、学校にいたはずで。それで…?」 キト「僕は…何か大事なことを、忘れている…?」 ぬかるみに足をとられた。 キト「うわっ」 ???「見ない顔ね、大丈夫?」 キト「わ、すみません」 振り返ると、西洋系の顔立ちをした女性がいた。 彼女もまた…目隠しをしていた。 女性「ずいぶんと白い子ね。どうしてこんなところにいるの?」 キト「白い?」 女性「ここは赤黒いでしょう、あなたみたいな清い目をしている子にはこんなところ似合わないわ」 女性「それとも…よっぽどのやり手なのかしら」 キト「さっきの人と同じようなことを言うんですね。まるで僕が何かをしたような…。僕は何もしてないはず、なのに」 女性「さっきの人?誰かに会ったの?」 キト「フードをかぶった男の人に会いました」 女性「ああ…あいつ。まぁここにはあいつらしかいないはずだものね。 あなた、どうしてここに?」 キト「僕は…何も、覚えてないんです。確か学校にいたはずで。 気づいたらこの空間にいて。訳のわからないことを言われて」 キト「死んだ人が集まるだとか、罪…だとか」 女性は眉をひそめる。 女性「妙なことを言うのね。あなた、死ぬ前のことを覚えてないの?」 キト「っ…僕は、死んでは、ないはずです。学校にいて、屋上に向かっていて…。 いきなり死んだなんて、そんなの信じられません」 女性「んん?おかしいわね…それに、やっぱりあなた、罪の意識があるようには見えない」 キト「犯罪なんてしてません!」 女性「犯罪…まあ、世間の人からそうなるのかしら。詳しく聞かせて」 ここまでの経緯を女性に話す。 女性「あなたは学校で彼女さんを探していた。 そして、屋上に向かった後気づいたらここにいた。そうね?」 キト「はい、そうです」 女性は首をかしげる。 女性「さっきから話を聞いている限り、妙ね」 女性「あなたの聞いた通り、ここは『罪の意識』を持った魂が集う場所。 女性「でも、あなたは死んだ記憶どころか、罪の意識もない…」 女性「ありえない。何か、この世界にあったのかしら」 キト「何か?」 女性「私にはわからない。でも、もしかしたら主なら何かを知っているかもしれないわね」 キト「主…?」 女性「それと、少し前はここじゃない真っ暗な空間にいたって言ってたわね」 女性「そこがどこかなのかはわからないけれど、その『真っ暗な空間』と『ここ』にあなたが来たことには何か理由があるのかもしれない。憶測だけどね」 女性「あなたは、人をこ…いや、人の死に関わったはある?」 女性「ここは、その…そういうこと(ルビ)をした人間が来るところよ」(顔をそむける) 女性は気まずそうに視線をそらす。 キト「人の…死…」 突如、血まみれの手が脳裏に浮かぶ。 キト「うっ!」 キト「い、今のは」 キト「今のは何だ…!?」 見渡すと、女性はいなくなっていた。 壁を滴る血がますます濃くなっていた。 キト「赤い…赤い血が」 先ほどの映像と壁の血の色に、頭の中がかき混ぜられる。 キト「何が…何があったんだ。あれは…あれは…」 キト「頭が痛い…うぅ」 キト「誰かが、血まみれで…僕は一体何を忘れているんだ」 キト「ん?」 少し先に、果物が落ちている。引き裂かれたように二つに割れている。 キト「これは………果物?見たことのない果実だ」 キト「まるで心臓みたいな…」 また、視界が白くなる。 ヒノが血まみれで倒れている。 血まみれの横で自分が立ち尽くしている。 自分の手が真っ赤で、それで。 視界が赤く―。 キト「手が…」 キト「僕の手が、真っ赤に…」 キト「それに、ヒノが、ヒノが血まみれで」 キト「う、うわあああああああ!!!!!!!!」 キト「はぁっ、はぁっ」 頭が熱い。視界がチカチカする。 こんな記憶、あったはずがない。 キト「なんだ、何だったんだ今のは」 キト「赤い…こんな記憶、覚えてない…!」 ???「うるさいな」 見ると、先ほどの男性より幾分か若そうな青年がいた。 青年「誰だよ、お前。でっかい声で叫びやがって」 目を隠された彼は、神経質そうな顔で迷惑だといわんばかりの表情をしている。 キト「ああ…ぁ…」 キト「血が…ヒノが、真っ赤に」 キト「なんで、ヒノが倒れて」 青年「お前が殺したんじゃねえの?」 思わぬ言葉に時が止まる。 キト「…え?」 青年「さっきから手が赤いだのなんだの、何を喚いてるんだよ・ 自分が殺したことも覚えてねえのか?」 キト「な、何を…言ってるんだ」 青年「人をぶっ殺した自覚もねえ奴がここに来てんじゃねえよ!!!」 キト「…ころ…した…?」 彼は何を言っているんだろうか?人を殺す?そんなことは。 青年「急に人のテリトリーに踏み込んだと思ったら大声で喚きやがって。 お前みたいな奴が『ここ』に来る資格はねえんだよ!!!失せろ!!!」 キト「なん…なんなんだよお前」 キト「僕がヒノを殺すわけないだろ!急に現れて何を言ってるんだ!」 そんなわけない。自分はそんなことはしない。その思いで言葉が荒くなる。 青年「殺すわけない?じゃあ何でお前はザイカに来たんだよ、お前はどんな思いでここに来たっていうん だ」 キト「僕は何も」 青年「この期に及んで何もしてないアピールか?自分が正義だとでも言いたいのか?馬鹿言ってんじゃねえよ!」 青年「お前に、何が分かる!お前みたいな半端な奴が何もわかるわけないだろ」 青年「お前のような何もしてないやつらと違って俺達はな!」 キト「何を」 青年「うるせえ、俺達の安寧の場所を侵すんじゃねえ!ここは俺らの居場所なんだ!!!」 青年「お前みたいな弱い意志の奴が、ここを、最後の場所を汚すな!!!」 青年「は、相手は女か?どうせ世間のやつらみたいに、痴情のもつれやら何やらで殺したんだろ? しかもそれを覚えてない? とんだクソ野郎だな!!!くだらねえ理由で人を殺して満足か? 俺らはてめえみたいに生き方を選べなかったんだよ!!! だから、ここで、主に…罪を…。自分で選んだ最後の意志として、ここで罪を償い続けるって誓ったんだ」 青年「おまえみたいな…罪の意識もないような奴が、大した覚悟もなく気分で人を殺すような奴が、来る場所じゃねえ!!!」 キト「僕は、僕は…殺してなんか」 青年「失せろ!!!クソ野郎!!!」 cp.4 鎮魂歌 キト「痛っっ」 予想に反して、冷たく硬い床に体が打ち付けられる。 キト「また周りが変わってる…」 今度は、全てがさびきった青銅で出来ているかのような場所だった。 よく見ると毛細血管のように青い何かが、その中を伝っている。 キト「僕が、ヒノを殺した?そんな、そんなはずは」 キト「ヒノは僕の大事な人だ、僕が殺すわけがない」 キト「…でも、あのとき見えたあれは?ヒノがどうして血塗れに」 キト「なんで僕の手が…血塗れに…」 地面に触れた手がどんどんと冷えていく。 キト「どうして何も覚えてないんだ、まさか本当に…」 キト「嘘だと、言ってくれ…誰か…」 ???「どうしたの?」 ???「何をしてるの?」 年端も行かない幼子達が現れる。 二人とも、金属で目をふさがれている。 幼子(男)「うつむいて、どうしたの?」 幼子(女)「悲しそう、何かあったの?」 キト「君たちは?…まさか君たちも」 この空間が罪と死の空間だというのならば。 こんな幼い子たちも。 幼子(男)「うつむいてたって何も始まらないよ」 幼子(女)「悲しいときこそ行動しなきゃ」 幼子(男)「さあ」 幼子(女)「手を取って」 キト「…ありがとう」 無垢なやさしさの前に、少し安堵する。 幼子(男)「お兄さんも誰かをなくしたの?」 幼子(女)「わたしたちもたくさんなくしたよ、みんな死んでいっちゃった」 幼子(男)「誰も死なせないためには強くならなくちゃ」 幼子(女)「そう、わたしたちは強くなきゃいけないの」 キト「強くなきゃ、か…」 この子たちも、少なくとも死に関わったらしい。 強くなければ、その言葉が響く。 そうだった、ヒノを探さなければ。 幼子(男)「だからお兄さん、僕らと訓練しよう!」 幼子(女)「うん、訓練しよう!おにいさんは魔法できなさそうだから剣ね!」 キト「魔法?剣?訓練って」 突然の非現実的な単語に驚く。 幼子(男)「はい、おにいさんこれ」 幼子の手には、いかにも西洋ファンタジー風といった剣が握られていた。 キト「なにこれ、……………本物!?」 受け取った剣は、作り物ではない重さがした。 キト「おもちゃじゃないのか、どうしてこんな小さい子がこんなものを」 幼子(男)「さあ、訓練だよおにいさん」 幼子(女)「本気でかかってきていいよ!わたしたち強いから!」 幼子(男)「手加減はするから安心してね、おにいさん兵士じゃないっぽいし」 幼子(女)「わたしの泡が弾けたらスタートね!よーい…」 幼子は杖を振りかぶる。するとまるで魔法のように杖からシャボン玉のようなものが現れ、目の前で弾けた。 幼子「「ドンッ!」」 キト「え、ええ!?」 ☆選択肢 →剣で防ぐ →剣を手放す ★選択肢:剣で防ぐ キト「っっ!」 反射的に剣で防御する。 幼子(男)「うん!タイミングはあってる!」 幼子(女)「次はわたしに攻撃してみて!」 ☆選択肢 →応戦する →剣を手放す ★選択肢:応戦する 幼子(女)「うーん、体重が剣にまっすぐ乗ってないよ!」 幼子(男)「こうやって、ぼくの真似してみて。そう、そのまま斬りかかる!」 ☆選択肢 →剣を振りかぶる →剣を手放す ★選択肢:剣を振りかぶる 幼子(男)「うん、いい感じ!」 幼子(女)「じゃあ、次はわたしだよ。覚悟はいい?」 ☆選択肢 →幼子に斬りかかる →剣を手放す ★選択肢:幼子に斬りかかる 幼子(女)「…わぁ、驚いた」 幼子(男)「おにいさん、ちゃんと人殺せるんだね」 幼子(女)「まあ、その程度じゃわたしは殺せないけどねー!」 キト「ころ…せる…」 幼子(男)「うん、それなら大丈夫」 幼子(女)「おにいさん、人殺したことないのかと思ったけど」 幼子「「ちゃんと殺せるんだね」」 キト「…そうだ、僕は…」 血に染まった自分の手を思い出す。 キト「ヒノを殺したんだ」 End.3 Bad End 「僕が殺した」 ★選択肢:剣を手放す 剣を手放す。 キト「...できない」 キト「僕には、人を傷つけるなんてできないよ」 幼子(男)「どうして?」 幼子(女)「どうして?」 幼子たちの表情が急に変わる。 幼子(男)「殺さなきゃ、生きられないよ」 幼子(女)「殺さなきゃ、守れないよ」 笑顔が抜け落ちる。 幼子(男)「ぼくたちがうまく殺せてれば、パパとママは死ななかった」 幼子(女)「わたしたちがうまく殺せていれば、パパとママは殺されなかった」 幼子(男)「ぼくたちが出来損ないだったから」 幼子(女)「わたしたちがシレイを全部できなかったから」 幼子(男)「みんな死んじゃった」 幼子(女)「みんなみんな、殺された!」 幼子(男)「ともだちも、せんせいも。ともだちのパパとママもそのあと殺された」 幼子(女)「パパとママが死んだのはわたしたちのせい。だからもっと強くならないと」 幼子(男)「もっと、殺さないと」 幼子(女)「殺さないと、殺さないと」 幼子「「殺さないと 殺さないと 殺さないと!!!」」 キト「やめてくれっ!!!」 幼子たちは声にかき消されるように消えていった。 →〇遭遇 奥底へ 〇遭遇 奥底 キト「殺してない、殺してない、僕はヒノを殺してなんかいない!」 真っ赤に染まった手を思い出す。 呼吸が荒くなる。 キト「あれは…あんなのは…嘘だ…」 キト「ヒノも僕も、死んでなんかいない…殺してなんかない…」 本当に?頭の中で声が響く。 キト「違う!違う、違う…」 キト「そんなことはしていない。僕はヒノを探しているだけ…僕は…」 壁を叩く。痛みはもはや感じない。 キト「僕は…そんなこと、していない…」 キト「じゃあなんで、僕はここに…ザイカってところにいるんだ…」 ???「おい、君…そこで何を」 キト「ひっ」 見ると、顔のない真っ黒な男がこちらに歩いてくる。 ☆選択肢 →その場にとどまる →逃げる ★選択肢:その場にとどまる キト「...っ」 男が近づいてくる。よく見ると男の顔は焼け焦げたために黒くなっているのだとわかった。 男「ああ…この姿を見たら驚くのが普通か。もうこの姿にもすっかり慣れていたから、すまない。私は怪しいものではないよ」 キト「そう、ですか…」 男「そんなこと言われてもって感じだよな。驚かせて申し訳ない。私はもうずいぶん前からここにいる者だよ」 よく見ると、黒い顔に金属の目隠しがしてあった。この世界の住人の象徴なのだろうか。 キト「…いえ、こちらこそすみません。失礼な態度をとってしまいました」 男「いや、平気さ。私はね、焼死したんだよ。おそらくそのせいでこんな見た目なんだと思う。一家心中をしようとしてね…」 キト「焼死…心中」 男「君は、どうしたんだい?なんだか取り乱していたようだけど。 もしかして、ここに来たばかりで混乱しているのかな? …大丈夫さ、君もここで罪を償えばいい。私も家族を」 キト「違う」 キト「僕は罪を犯してない。僕は殺してなんか」 男「うん?」 キト「僕は、罪なんて犯してないです。…たぶん。 ただ、学校で彼女を探していたら、いつの間にかここにいて」 男「…」 男「少し、歩こうか」 カン、コン、カンと金属音がこだまする。 男「なるほど、そんなことが。あり得る…のか?死んでいない人間がここに来るなんて」 キト「でも、僕自身もわからなくなってきているんです。何かを忘れている気がして。 何か、とても重要なことを忘れている気はするんですが」 男「そうか。それは私にはわからない。それはきっと君自身が思い出すべきことなんだと思う。 忘れていることに意味があるんじゃないかな」 キト「忘れていることに意味がある…忘れたがってるんでしょうか。 そうするとやっぱり…僕は…ヒノを…」 殺したのだろうか。恐ろしすぎてその言葉は喉からでなかった。 男「そうだなあ。これは、かもしれない程度の憶測だけど。 もしかしたら、君は誰かに呼ばれたんじゃないか?」 キト「呼ばれた?」 思わぬ言葉に虚を突かれる。 男「私はね、ここに来てから時々、家族の気配を感じるんだ。 ここはザイカ。罪の意識に苛まれる者が来るところ。罪を犯したのは私だから家族がいるわけないのだけども。 …感じるんだ。もしかしたら、天国からのぞきに来てくれているのかもしれないと思ってね。 だからね、こうは考えられないかな。もしかしたら誰かが、誰かの強い罪の意識が君を呼んだのかもしれない」 キト「誰かが…?」 男「例えば、その…彼女さんとか」 キト「ヒノが?それって…ヒノが死んだってこと」 ヒノが血まみれになっている様子がフラッシュバックする。 キト「ううっ」 キト「ヒノがここに本当にいるとしたら…ヒノは、もう。 …でもなんで、そうしたら、ヒノがここに? さっき見たあれが正しいなら、ヒノじゃなくて僕がここにいるはずで」 男「でも、君は罪を犯したという記憶はないんだろう?」 キト「はい…いや、わからないです。僕はもう自分が信じられない…」 男「記憶が混乱しているんだね」 キト「…はい。それに、ヒノが罪の意識を抱く?なんで」 男「…」 男「彼女さんのことはわからない。でも、君自身が死んだ記憶がないというなら、君はまだ可能性があるかもしれない。 だから…主のもとに行ってみるといいかもしれない」 キト「主…前も聞いたな。主って何ですか?」 男「主は、このザイカの全てを統べる存在。このザイカを作った存在とも聞いている。 どうしても償いたいことがあるようで、ずっと罰されている。彼女には、一体どんなことが…どんな罪悪感を抱えているのだろうか」 キト「どうしたら、主に会えますか?」 男「罪を償いたいと願えば普通は会えるんだけど、君の場合は…。 きっと真実に触れていけば会えるんじゃないかな。今までもいろいろと見てきた『それ』が、真実の断片だと思う」 キト「真実の断片…。わかりました、いろいろとありがとうございます」 男「いや、君の役に立てるなら…それも償いのひとつになるだろう」 男「私は、君が生きているのだと信じるよ。どうかあきらめないで、この世界に呑まれないでくれ」 キト「はい。…ん?」 どこからか音楽が聞こえる。それはとても耳なじみのある曲だった。 キト「これは」 男「何かみつけたんだね、行っておいで」 キト「はい、いってきま」 言い終わらないうちに、空間がぐにゃりと曲がったかと思うと、男がいたはずのところは壁になっていた。 キト「…行かなきゃ」 音の聞こえるほうへ向かっていった。→〇楽譜を発見へ ★選択肢:逃げる キト「う、うわぁ!」 もつれそうになる足を必死に前に出しながら走る。 ???「あ、そっちには行くな!」 耳を貸さず、走り続ける。 キト「逃げなきゃ、ここから…この世界から」 ヒノ?「大丈夫だよ、キト」 キト「ヒノ!?」 ヒノ?「大丈夫、キト。私は後悔なんてしていない」 キト「ヒノ、どこに」 ヒノ?「ここへ来てくれてありがとう。これでずっと一緒にいられる」 ヒノ?「ずっと…ずっと一緒に」 徐々に周りが暗くなっていく。 やがて、妙な生ぬるさに包まれていく。 ヒノ?「これで ずっと いっしょ」 End 4. Bad End 「祈りと灯」 〇楽譜を発見 音がだんだんと大きくなっていく。 キト「これは…ヒノのお兄さんが作った曲」 ヒノにはお兄さんがいた。ヒノの両親と同じく音楽の道を志し、音大に通っている。 キト「よく、ヒノの家に行って聞かせてもらってたっけ」 小さいころからお世話になっていたキトのお兄さん…ケイさんの曲。 ヒノはお兄さんによくなついていた。キトもまた、お兄さんのことが大好きだった。 キト「どうしてケイさんの曲がここで聞こえるんだ?」 彼もまた、この世界に関わっているのだろうか。 歩いていると、どこからか紙が降ってきた。 キト「これは…楽譜」 楽譜を手に取る。 キト「うっ」 視界が白くなる。 ケイがキトとヒノをかばうシーン ケイが焦った顔をし、キトを突き飛ばす。 キト「ケイさんが…僕をかばって」 ページをめくる。 キト「これは…ヒノのお父さんとお母さん」 キト「怒ってる…いや悲しんでいる…?」 ページをめくる。 学校でキトがヒノに話しかけている。 ヒノは困ったような、悲しい顔でキトを見ている。 ページをめくる。 そして、ヒノが屋上で。 キト「ーーーヒノ!!」 cp.5 一つ火 キト「今のは…」 頭が痛い。鼓動が早くなる。 開けてはいけない蓋を開けてしまったような感覚がした。 見ると、周りの風景が変わっていた。 薄暗い通路。その真ん中に火の灯っていない松明が4本ある。 キト「…」 この松明が、真実を教えてくれる。そんな気がした。 キト「思い出さなきゃ。主のもとに…行かないと」 恐る恐る、松明に近づいていく。 一つ目の松明に触れると、灯がともった。 視界が白く染まる。 キトとヒノは学校にいる。いつも通りの日常が脳内に流れる。 キト「学校にいて…ヒノを家まで送って行って」 ヒノの家の前。ケイが帰ってくる。 キト「喋っていたらケイさんが帰ってきて」 視界が元に戻る。 キト「いつも通りの日だった、はず」 疑問を抱きながら二つ目の松明に触れる。 走ってくる車。その車はふらふらと揺れながら加速してきた。 ケイがそれに気づき、キトとヒノを突き飛ばす。 キト「…そうだ。お兄さんが…僕をかばって…」 ケイが血まみれになる。車は勢いを落とさず通り過ぎていく。 忘れたかった記憶が徐々に思い出されていく。 キト「うぇっ」 目の前に広がった血。すりつぶされた腹。陥没して面影のなくなった―――。 キト「っああああ!!!」 思わずその場にうずくまる。開けられた箱から濁流が流れてくる。 ついさっきまで話していた親しい人が、目の前でぐちゃぐちゃになっていくさまがありありとよみがえる。 キト「僕のせいで…僕のせいでケイさんが」 ぐちゃり。ぐちゃり。聞こえるはずのない音が頭の中で響き渡る。 キト「うあぁあぁっ…」 徐々に、蓋をした『罪悪感』が顔を出す。 ーーー『あの時、会話を早く切り上げていれば』 ーーー『家の中に入っていれば』 ーーー『お前があそこにいなければ』 ーーー『『『お兄さんは、死ななかった』』』 キト「やめ…あああああ!!」 声は止まらない。 ーーー『お前が話を伸ばした』 ーーー『お前がケイさんをあそこに誘導した』 ーーー『お前が ケイを 殺した』 キト「ーーーッッ」 キト「僕が…殺した…」 立ち上がれない。身動きがとれない。 キト「これが、僕の、忘れていたこと」 そこまで考えて、ふと思い至る。 キト「まだ2本ある…」 戻った視界には、まだ火の灯っていない松明が2本写る。 キト「こ、これ以上何を忘れてるっていうんだ。 まだ…忘れてる大事なことがあるのか…?」 怖い。真実を知るのが怖い。 でも、知らなければいけない。知らなければヒノに会えない。 キト「ヒノ…」 ヒノに会いたい。ヒノを見つけ出したい。 キト「ヒノのためにも…進まないと」 縮こまった足にどうにか力を入れる。 1歩、2歩。 やっとの思いで三つ目の松明にたどり着く。 キト「僕は、ヒノのために、真実を思い出す」 松明に、触れた。 泣いているヒノに寄り添うキト。ヒノの顔は困ったような、迷いのあるような表情を含んでいた。 ヒノの両親が映る。ヒノの両親はヒノにこう告げる。 ヒノ母「ヒノ、お願いがあるの。 キトくんと 別れてほしいの。 お母さん、あの子の顔を見ると辛くて…お願い、わかって頂戴」 ヒノ父「俺だってこんなこと言いたくないが、わかってくれ…ヒノ。 こんな状態だし、しばらく離れてほしい。 お母さんのためだ、わかってくれるね?ヒノはいい子だから」 部屋でヒノが膝を抱えている。誰にも話せない。誰も頼れない。 学校に景色が移り変わる。キトはヒノに話しかけようとするが、ヒノはキトを避けている。 視界が元に戻る。 キト「ヒノ、そんなこと言われてたの。 そんな、そんな。 でも…そうか。きっとご両親も僕のせいだと思ってるんだろうな…」 キト「………」 キト「僕はどうするべきなんだろう。 ヒノに会わないほうがいいのかな。 ヒノのためには…僕は…。 ここで罰されたほうがいいのかもしれない。 ………………」 世界が揺れる。いや、揺れているのは自分自身だった。 わからない。どうしたらいいのかわからない。 次の松明に触れるべきなのか?このまま思い出さずに自分はここに居続けるべきなんじゃないか? 視界がぐらぐらする。わからない。わからない。 ヒノに会わないほうがいい。繊細なヒノのことだから隠れて会うなんてことはできないだろう。 それに――ヒノの家族に拒絶されているのならば、自分が隣にいる資格などないだろう。 それでも、でも。 キト「ヒノに…会いたい」 自分がここで罰を受ける羽目になっても構わない。 ヒノが幸せに生きられるのならそれでいい。 でも、ヒノに会いたい。それに、ヒノがもしこんな場所にいるのなら助け出さなければ。 キト「そうだよ、ヒノがこんなところにいるなら見つけないと。 こんな場所、ヒノがいていい場所じゃない。ヒノは何も悪くない」 キト「ヒノを見つけないと」 最後の松明に手を伸ばす。 灯に触れる。 燃えてしまうかもしれない、そんなことは些細なことに思えた。 火を握りしめた。 ヒノが絵を描いている。その瞳に光はない。 手元の絵は真っ黒で形をなしていなかった。 その絵を机の上に放り出し、ヒノは席を立つ。 美術室を出て、階段を上がっていく。 その背中はあまりにも不安定で。 屋上に出たヒノは、フェンスに近寄っていく。 そして、フェンスを乗り越えて。 キト「ヒノ!!!」 そうだった。全て思い出した。 ヒノは、ある日から僕を避けるようになった。 話しかけるたびに辛そうな顔をして、お兄さんのことがあったからだと思ってた。 でも、少し違った。ご両親に言われたことがあったから、余計に辛かったんだ。 気づくことができなかった。 そして、あの日。 ヒノを探していた僕は。 ヒノが、屋上から飛び降りていくさまを見た。 間に合わなかった。伸ばした手は空を切った。 すぐさま助けを呼びに行った。ヒノのもとへ向かった。 甲高いサイレンが頭の中で鳴り響く。 血に沈んだヒノを見た。それはまるでお兄さんが死んだときのようで。 どうしてこんな、こんな理不尽な目にあわなければならないのか。 ヒノに声をかける暇もなく、先生たちに押しのけられた。 見てはいけない、と。校舎に戻れ、と。 水色の服を着た人たちによってヒノが運ばれていく。ヒノが見えなくなっていく。 そして、ヒノは、永遠のような眠りについた。 絶望的な状況らしいと、先生に淡々と告げられた。 信じられなかった。 だから僕は記憶に蓋をした。受け入れられない現実から逃れるために。 キト「………………」 言葉にならない感情が身を裂く。 心臓が痛い。耳の奥がどくどくとうるさい。 四肢が灰色に染まるように。脳が体を動かすことを忘れていく。 キト「…これは」 ☆選択肢 →「現実だ」 →「現実なんかじゃない」 ★現実だ/現実なんかじゃない 選択肢に関わらず続く ???「あははははははははは!!」 突如、笑い声が響く。なぜ、笑っている?引き裂かれた胸には、あまりにも苦痛な音だ。 白い少女が現れた。 彼女もまた黒い金属の目隠しをしている。 いや違う、彼女は右目だけだ。半分から先は砕け散ったようになっており、左目があらわになっている。 白の少女「私 あなた 知ってる」 白の少女「ヒノ ヒノ ヒノ シナナイデ ヒノ」 白の少女「ウワアアアアア!!!あははははははははは」 キト「何…何、君は」 ケタケタと笑う少女の異様さに圧倒される。なんだこいつは。 白の少女「アナタハ罪ヲ犯シマシタ」 白の少女「アナタノ罪ハナニ?」 キト「ぼ、僕は」 白の少女「過去 変えたい?」 キト「…え?」 白の少女「歪み 過去 変える」 キト「どういうこと?」 過去を変える? 白の少女「全部 なかったことにしよう 違う 本当は こんなおわりじゃない」 白の少女「いらない こんな記憶いらない 全部 嘘」 白の少女「ヒノハ シンデナンカイナイ」 白の少女「幸せに なる 幸せに なるの」 白の少女「変えよう こんなおわり」 白の少女は手を伸ばす。 幸せに、なる。過去を変えられる、本当に? もし本当ならば、ヒノは死なない?ケイさんも死なない? またみんなで笑えるのだろうか。なかったことになんてできるのだろうか。 目の前の少女は、それをかなえてしまうかもしれないという異様さを放っていた。 キト「僕は…」 ☆選択肢 →過去を否定する →現実を見る ★現実を見る …いや。 キト「僕は、助けられなかった。僕が追い詰めてしまった。僕が殺してしまったのかもしれない」 少女は理解できない、という顔で近づいてくる。 白の少女「…?????????」 白の少女「違うよ!!! なんで 変えようよ 一緒に 手伝って 変えよう」 白の少女「ほら 手を取って はやく」 ☆選択肢 →やり直す →現実を受け入れる ★現実を受け入れる 一歩下がる。少女から距離を置く。首を振る。 白の少女「…なんで」 白の少女「なんでなんでなんでなんでなんで!!!!!!!!!」 白の少女「変えなきゃいけない!!!私は!!!!!正しい!!!!間違ってない!!!!」 キト「…ヒノは、たぶんもう…助からない。過去は変えられないし、変えちゃだめなんだ」 キト「それが、間違った選択だったとしても…僕は、ヒノを責められない。ヒノの…ヒノの…、これがヒノの結末なんだ。僕はこの罪を背負わなければならない」 キト「どんな選択だったとしても、これは…ヒノの選択だったんだから。最後の意志を、踏みにじってはいけない」 白の少女「………あ」 白の少女「ああああああああああああ」 白の少女「違う!!!!!過去 変えなきゃいけない!!!!私は 私は」 白の少女「わ たし は 捨てられてなんか」 キト「…」 少女は消えていった。 →cp.6へ ★過去を否定する/やり直す 信じてみよう、そう思った。 どうか、どうか、ヒノとケイさんに死なないで欲しい。 少女の手を取る。 白の少女「うん そう それが 正しい」 白の少女「過去 変えよう 幸せに なろう」 少女はにやりと笑った。 →cp.?へ cp.6 ザイカ 最後の松明は消え、僕と暗闇だけが残っていた。 闇に目が慣れる。 景色が変わってくる。 ここは…。 キト「屋上…?」 ヒノが立っている。 キト「ヒノ!!!!」 駆け寄ろうとしたが、檻のようなものに阻まれる。 そして気づく。ヒノの目には枷がされている。 ヒノ「キト…来てくれちゃったんだね」 ヒノ「ごめんなさい、ごめんなさい…」 ヒノ「キトが来る必要なんてなかったのに」 ヒノ「私が呼んでしまった」 キト「そんなことない、僕は」 ヒノ「近づかないで!!!」 ヒノ「…ごめんなさい、キトはまだ生きてるから。これ以上私に近づいちゃいけない」 キト「でも」 ヒノ「私は死んだの」 キト「…」 ヒノ「お兄ちゃんを殺してしまったから。私が代わりに死ねばよかったのに!」 キト「な、なんで、そんなことな」 ヒノ「私が悪いの、全部、全部、私が悪いの!」 ヒノ「お兄ちゃんを死なせてしまったのも、お母さんとお父さんを悲しませたのも」 ヒノ「死ぬべきは私だった。未来のあるお兄ちゃんは生きるべきだった!」 ヒノ「才能のない私が生き残ったところで…!!」 キト「そんなこと…ないよ…」 ヒノ「…ああ、また罪を重ねてしまった。ごめんなさい。あなたの前で言っていいことじゃなかった」 キト「…そんな、ことない…違う、そうじゃなくて」 キト「あれはヒノは悪くないよ、ご両親のことだって、その…」 キト「………」 言葉が出ない。僕は今何を『言うべき』なんだ? キト「僕だって…僕だってヒノを…守れなかった…」 ???「それが貴方の罪?」 見上げると天井を埋め尽くすほどの大きな女性がいた。 彼女は輪のようなものにくくりつけられているようだ。 そして彼女の腹からは巨大な目がのぞき、そこから触覚のように伸びる物体がヒノを囲っている。 ???「ここはザイカ。罪なるザイカ。貴方の罪は何?」 ???「ここは全てを赦す場所。ここは償いを認める場所」 ???「貴方の罪の意識を私は受け止めましょう」 ???「償いを。罰を。永遠の赦しを…」 ヒノ「ダメ!!!」 ヒノ「主、悪いのは私だけです。キトは何も悪くない!!!」 ヒノ「それにキトはまだ生きている!私みたいに、愚かな…愚かな私とは違います」 ヒノ「どうか、元の世界に戻してあげてください。私はここでずっと償いますから…!」 キト「待ってよ、それじゃヒノが救われないじゃないか!僕はヒノに会うために、ヒノを救うためにここまで来たんだ!」 ヒノ「…」 ヒノ「私は罪を犯した。 お兄ちゃんを死なせた。私が生き残って親を絶望させた。自殺という罪まで犯した」 ヒノ「私の居場所はもうここにしかないの」 ヒノ「ここが私の居場所なの」 キト「それは、ヒノのせいじゃないよ!ヒノだって被害者だ」 キト「それにこんなところにずっといるなんて…あんまりだ、あんまりだよ」 キト「ヒノが罪悪感を抱く必要なんてない」 ヒノ「私の気持ちを…否定するの…?」 キト「違う、そういうわけじゃない。そんなこと言ったら僕だって」 ヒノ「だめ、キトはそんなこと考えちゃダメ。吞まれちゃう」 キト「それはヒノも同じだよ!どうしてわかってくれない…」 ヒノ「私はもう罪を犯したの!自殺という取り返せない罪を。キトは違う、まだ、まだ生きているでしょう」 キト「でも…!」 白の少女の声「取り返せるよ」 キト「!?」 頭の中に声が響く。 白の少女の声「大丈夫 一緒に戻れる あなたの 想いがあれば」 キト「僕の…想い…」 ヒノ「お願い。私からもうこれ以上居場所を奪わないで」 白の少女の声「偽リノ罪 これは偽リ 罪を 否定して」 ヒノ「現実にもう私の居場所はなかった。ここだけが、主だけが、私の存在を赦してくれるの」 白の少女の声「違う アルジは いい人じゃない アルジは 自分勝手」 ヒノ「それに…もう私は死んだのだから。キトを残してしまったのはとても、とても申し訳なく思ってる。でも、あのまま生きていたってキトとはもう一緒にいれないの」 キト「…」 ヒノ「だから、お願い。帰ってほしいの…」 白の少女の声「だめ 受け入れるの? 取り返そう 罪を 否定して」 キト「僕は…」 ☆選択肢 →ヒノの罪を受け入れる →ヒノの罪を否定する ★ヒノの罪を受け入れる キト「……………わかった」 キト「それが、ヒノの意志ならば」 キト「最後にヒノの話が聞けて良かった…何も言わないでいっちゃうから」 ヒノ「本当にごめんなさい 本当に」 キト「ううん」 キト「ヒノ」 キト「僕は、あなたを赦します」 キト「死んでしまったのはとても、とても悲しいけれど。守れなかった僕にも非があるし、何より…何より」 キト「ヒノが苦しんで考えた末の結末を、否定したくない」 キト「ここにいるのがヒノの救いならば…僕は、それを、尊重するよ」 キト「…ううっ」 こらえてきた涙がこぼれる。 ▼キト 泣き顔 主「ここはザイカ。罪なるザイカ」 主「全ての罪を癒す場所。全ての罪を赦す場所。償うことを認める場所」 主「春日井灯乃。貴方の罪の意識は私が一緒に受け止めます」 主「救いがここにあらんことを」 ヒノ「ありがとうございます、主。…キト」 キト「うん」 ヒノ「こんな私を好いてくれてありがとう。ごめんなさい」 気が付くと、病室にいた。 目の前には、もう目を覚まさないヒノがいる。 過去は、取り戻せない。過ぎた後にしか、大切なことには気づけない。 ヒノに残るのは罪だったのか。 キト「…僕は、そう思わない」 キト「でも、それでも」 キト「僕は残された者として、生きなきゃならないんだ」 僕は僕の罪を背負おう。 代わりに生きることが償いだと信じて。 End 1. True end 「ザイカ」 ★ヒノの罪を否定する キト「認めない。ヒノが罪の意識を抱くなんておかしいよ」 キト「ヒノ、こっちに来て」 キト「過去は変えられないけど…でも、あの日の事故は、不幸な出来事だった。別れることを強要するのはご両親が間違ってる」 キト「それに…ヒノが罪を犯したというのならば、僕がやったことだって罪になるはずだ」 キト「でも、そんなのおかしいだろう。僕たちはただ、ただ毎日を過ごしてただけじゃないか」 キト「大丈夫、僕が何とかする。だから、だから」 キト「ヒノがここにいるなんて、認めない。僕が助ける」 ヒノ「………そんなこと、できるわけ」 キト「大丈夫、僕が何があっても、ヒノを救うから」 キト「たとえ…それが、摂理に反していても」 白の少女の声「ふふふふふっ」 主「いけない…それ以上は」 白の少女の声「私は 歪み この世界の歪み」 白の少女の声「認めない アルジの することなんて」 主「ああ、私の子。あなたのせいね。ごめんなさい、ごめんなさい」 主「あなたのための償いを」 白の少女の声「うるさい そんなこと 何になる」 轟音がする。この空間が壊れるような。 ヒノ「キト!」 キト「大丈夫、ヒノ」 キト「たとえこれが過ちだとしても」 キト「僕がヒノを守るから」 気が付くと、病室にいた。 目の前には、ヒノがいた。 ゆっくりと、その目が開く。 彼女に繋がれた機械が、正常という異常を知らせる。 ヒノ「キト…?」 キト「ヒノ!」 ヒノの左目は空を泳ぐ。右目は機能していないかのように一点を見つめる。 ヒノ「ワタシハ…」 キト「よかった、ヒノ、ヒノ!」 ヒノを抱きしめる。反応はない。 ヒノ「此処ハザイカ。罪ナルザイカ」 ヒノが何かを呟いた気がした。どうでもいい。ヒノは戻ってきたんだ。 ヒノの顔を見ると、右目の周りが青黒く染まっていた。 どうでもいい。そんな事些細なことだ。 キト「大丈夫、何があっても僕が支えるから」 ヒノは人形のように生気がない。大丈夫。戻ってこれたんだから。 彼の目には、彼女の『歪み』は見えていなかった。 白の少女の声「ふふふっ」 End 2. Happy? end 「歪んだ灯」 cp. ? 消滅 雨の音がする。 今日もまた、あの日と同じ雨。 私は制服を着て、クラスメイトとともに葬儀場にいた。 クラスメイト「聞いた?事故だって」 クラスメイト「ヒノちゃんの家の前で…お兄さんとヒノちゃんは無事だったらしいけど」 クラスメイト「バカ聞こえるって。不謹慎だよ…」 クラスメイト「でも付き合ってたんでしょ?あの二人。さすがにやばいって」 クラスメイト「シッ。こっち来る…あ、ヒノちゃんおはよう…」 ヒノ「…おはよう」 無理に作った笑顔。ひきつっているのはわかっていた。 両親は、子供たちが無事だったのがせめてもの救いだよと言った。 私の、恋人が死んだのに。子供たちが死ななくてよかっただって。 ヒノ「キト…私は…どうすればいいの…」 冷たい雨は今日も花を散らす。 ???「ふふっ」 ???「アナタノ罪ハナニ?」 End 5. Bad end 「消えた祈り」
- ザイカキャラクター紹介 | 日雀レオの創作
キャラクター紹介 キト 深山祈人(ミヤマキト) 主人公。ヒノの恋人。高校生。 消えたヒノを探しに学校を探している途中に、不思議な空間にたどり着く。 ヒノとは幼少期からの付き合いであり、中学のころから付き合っている。 一人っ子で、ごく普通の家庭で育つ。 おとなしい性格で、成績は中の上。 ヒノ 春日井灯乃(カスガイヒノ) キトの恋人。キトと同い年。 おっとりした性格で、人当たりがいい。 兄がいる。家族は音楽一家で、父と兄はピアノ、母はバイオリンをやっている。ヒノ自身はピアノもバイオリンも一応弾けるが、アマチュアの域を出ない。 成績は中ぐらいで、キトと得意科目が被らないためよく教えあっている。 主 この世界を統べる主。彼女もまた、罪に囚われる存在である。 本名 エデナ 雷鳴が轟く頃。神は彼女を許さなかった。 彼女の罪は「裏切り」。 私は神を裏切りました。 神に捧しこの体は、人間の男によって蝕まれました。 私は周りを裏切りました。 下ろすことも、育てることも、許されるはずがありません。 私は子を裏切りました。 ならばせめて、神の目の届かぬところで幸せになってほしかった。 子は明らかに、周りと違う見た目をしていました。 この体では、きっとこの村で生きていけないでしょう。 もう隠しきれない、ならばせめて、外へ。 この子に罪はありません。 私が全ての罪を引き受けます。 死んでも贖い続けましょう。 キト 深山祈人(ミヤマキト) 主人公。ヒノの恋人。高校生。 消えたヒノを探しに学校を探している途中に、不思議な空間にたどり着く。 ヒノとは幼少期からの付き合いであり、中学のころから付き合っている。 一人っ子で、ごく普通の家庭で育つ。 おとなしい性格で、成績は中の上。 1/12
- 終わる世界で選ぶ道 | 日雀レオの創作
終わる世界で選ぶ道 ある日、大規模な災害が世界中を襲った。 地震、津波、火災、洪水、爆発、台風…。 人間たちは為すすべなく、敗北する。 地上は変化を遂げた魑魅魍魎が跋扈する地獄となり、 放射能、電磁波、気温など様々な影響で 人間の住める環境では無くなった。 わずかに生き残った人間はその多くが 地下で生活することを余儀なくされた。 しかし、一部の人間は地上の環境に適合する。 それが、「化物化」である。 身体の一部が徐々に変化を遂げ、 やがて人間とは似ても似つかない姿形になる。 異形と呼ぶにふさわしいその生き物は、 果たして人間と呼べるのだろうか? しかし変化を拒めばその体は地上の環境に耐えられず、 やがて死んでしまうだろう。 人として死ぬのか? 化け物として生きるのか? キャラクター一覧 キャラクター一覧です。 工事中 。 工事中 。 落書き
- 殺戮サーカス団 | 日雀レオの創作
殺戮サーカス団 世界への怨みつらみ、外れもの、殺人衝動に社会不適合者など、 訳あって社会にいれなかった者たちの集まり サーカスとは名ばかりで、演目を演じるかのように人殺しを 生業としている 殺すのは世のため人のため恨みのため金のため欲のため仲間のため、 それぞれが思い思いの感情を抱いて生活をしている 団長という存在が取りまとめており、団員の前にしか姿を見せない キャラクター一覧 シャルロット あだ名:シャルル サーカス団の猛獣使い。 虐待を受けていたところをサーカス団に救われた。 J 正式にはJohanna(ヨハンナ) サーカス団のジャグラー。 過去にやけどで頭皮や全身にやけどの跡がある。 リコリス サーカス団の催眠術担当。 目を見てもらうことで洗脳ができる超能力を持っている。 しかし、すべての人に効くわけではなく、本人の調子によってはうまくいかないこともある。 砂糖依存。イライラすると爪を噛む。 シャルロット あだ名:シャルル サーカス団の猛獣使い。 虐待を受けていたところをサーカス団に救われた。 1/7 落書き